近年,航空機などの他の公共交通機関に対する優位性を確保するために,新幹線の営業速度向上が求められている.しかし,高速化を実現するためには未だ多くの問題を解決しなければならない.そのひとつに集電性能の向上がある.新幹線は線路上空に設置された架線から車両屋根に取り付けられた
パンタグラフ
を用いて車両内部に電力を取り入れ,台車に取り付けられたモータを回転させることにより走行する.そのため,走行中においても架線と
パンタグラフ
とは常に一定範囲の力で接触していることが望ましいが,架線振動や
パンタグラフ
に作用する空気力などの影響により接触力は常に変動し,これが許容範囲を超えると集電性能の低下や架線および
パンタグラフ
すり板の摩耗量増大などの問題を引き起こす.そこで本研究では,
パンタグラフ
にアクティブ制御を組み込むことにより集電性能の向上を目指す.その第一歩として,図A1に示すような制御機構を実機の新幹線用低騒音
パンタグラフ
に組み込み,摺動試験や風洞試験を実施することで,接触力変動の抑制にアクティブ制御が効果的であるか確認を行った.制御の手順としては,まずすり板を支えるばねに力センサを取り付け,架線と
パンタグラフ
との間に作用する接触力を測定する.次に測定値と目標値から偏差を求め,PID制御を用いて操作量を決定し,最後に操作量を空気圧アクチュエータに入力して
パンタグラフ
の押上力を調節することにより接触力制御を行う.この制御機構付き
パンタグラフ
に対して摺動試験および風洞試験を実施した.摺動試験では,アクティブ制御を行うことで接触力変動を抑制することが可能であることを確認した.しかし一方で,制御を行わない場合には見られなかった高周波振動が新たに現れるなど,解決すべき問題も明確となった.また風洞試験においては,
パンタグラフ
に外乱として空気力が作用する状況下においても,制御を行うことで接触力変動を抑制することが可能であることを確認した.以上の試験結果から,
パンタグラフ
にアクティブ制御を組み込むことで接触力変動を抑制することが可能となり,集電性能の向上に効果的であることがわかった.
抄録全体を表示