芝草害虫であるシバツトガとスジキリヨトウに対して, フェロモンを利用した交信攪乱法による同時防除試験を行ったところ, 以下の結果を得た。
1) 両害虫の発生消長の調査法では, フェロモントラップ法は調査が簡便で, 成虫の発生時期を実用上有効に把握することができた。しかし, 発生量の少ない越冬世代成虫や2世代後半成虫においては, 精度に問題があった。
2) ライトトラップ法は簡便ではあるが, 発生時期の調査において現場向きとは言えない。しかし害虫発生量を追跡するのに有効な手法であった。
3) 交信攪乱剤PD処理による防除効果は以下のとおりであった。
(1) ゴルフコースの周辺樹木にPD2, 000本/haを処理し, その近くにフェロモントラップを設置して, 誘引阻害効果を調べたところ, PD処理区は防除効果があることを認めた。しかし距離による効果の減衰があることが指摘できた。
(2) 両種の野外個体の交尾率及び交尾阻害率を調査したが, PD処理区と無処理区で差があったが, 実用上は十分とは言えなかった。
(3) つなぎ雌法による交尾率を調査したところ, 両種共にPD処理区で高い値を示し, 実用上も有効であると考えられた。
(4) シバツトガの産卵は7月下旬頃から増加し, 8月下旬~9月上旬頃ピークに達することが推定された。PD処理区のシバツトガの産下推定卵数は無処理区に比べやや低い程度であった。スジキリヨトウでは卵塊の発見が困難で十分な結果が得られなかった。
(5) 成虫の個体数をコノテガシワ内に潜む昼間の数や, 夜間の簡易トラップへの飛来数を調査したが, PDの設置の影響はなかった。
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