ホーム
プロジェクト
は、家庭科の学習と家庭生活を結びつけ、生徒自らが抱いた問題について、教師の指導と家族の協力のもとに家庭生活の改善・向上を図る学習である。
ホーム
プロジェクト
は、1948年CIEの顧問として来日したルイスの推奨によって日本の家庭科教育にも取り入れられるようになった。ホーム
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は、家庭生活の変化に対応していくためにも重要な役割をもち、よりよい生活作りという使命を果たすのに最適の学習として捉えられる。
現在我が国の子どもは、PISA調査において、思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題、知識・技能を活用する問題に課題があるという結果が出た。このような状況の中、まさに問題解決学習であるホーム
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に、注目が集まってきた。
一方、ホーム
プロジェクト
の指導の困難さや生徒の家庭問題に対する関心の低さ、さらに家庭科の単位数不足などから、多くの高校でホーム
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を実施していない現状が明らかとされている。そこで本研究では、
「家庭基礎」における理想的なホーム
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指導法を考案し、その検証を試みることを目的とする。
研究方法は、文献研究と実態調査、検証授業で行った。
まず、文献研究では先行研究を調査し、現在のホーム
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の課題とされていることを、以下の3点にまとめた。
(1)指導者側の問題
・指導者が、ホーム
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の重要性を認識していない。
・ホーム
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の指導法についてのイメージが沸いていない。
・家庭内の問題に教員が立ち入ることや、個別指導が難しい。
(2)生徒側の問題
・不自由のない生活ゆえ、家庭問題に関する関心が低い。
・受験科目学習や部活動に比べホーム
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の優先順位が低い。
(3)単位数の不足
・「家庭基礎」の内容が豊富なため、ホーム
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の指導に割ける時間数が少ない。
次に、戦後の高等学校家庭科学習指導要領や教科書、年代別ホーム
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テーマを分析し、内容動向調査を行った。
実態調査は、従来のホーム
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指導法における生徒の実態と、検証授業対象生徒の実態を調査した。検証授業は、福岡県立M高校2年生8クラスで行い、従来の指導法と違う以下の3段階の工夫を行った。
(1)テーマ設定時における工夫
(2)ホーム
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発表会における工夫
(3)ホーム
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を継続させるための工夫
その際、より効果的な指導法を探るため、グループ学習を導入した実験群と導入していない対照群を設定した。各段階ごとに質問紙調査を行い、全体を通してグループ学習の効果を見るため、調査結果分析時に両群の比較を行った。
検証授業の結果、生徒のホーム
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に対する意欲、役立ち感、満足度は飛躍的に向上し、指導法次第では、「家庭基礎」2単位においても、効果的なホーム
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の指導を行うことが可能であることが分かった。
ホーム
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を実践することは、家庭科を日々の生活に活かす思考を形成することにつながる。すなわち、ホーム
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は家庭科の意義を示す真髄とも言える。ホーム
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は、今まさに日本の教育で求められている学習法である。今後も、よりよいホーム
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の指導法を探るため、研究を続けたい。
※なお、この研究は、平成20~21年度、発表者が、福岡教育大学大学院において、甲斐純子教授の指導のもと行ったものである。この場を借りて御礼申し上げる。
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