老朽化あるいは損傷による劣化が深刻化し, 社会資本に対する維持管理費は増加の一途をたどるという予測がされている. 他方, 制約された予算の下, 公共事業費が削減される傾向であることも否みがたい. このような社会経済情勢にあって, 事業者・施設管理者が社会資本を維持管理していくためには, 投下する資金がそれに見合う産出と成果を生み出すことを合理的に説明できるシステムを構築する必要がある. 以上の観点から, 近年アセットマネジメントという考え方が導入され, わが国においても盛んに調査・研究が進んでいる. しかしながら, アセットマネジメントに関する現在の調査や研究は, 維持管理あるいはメンテナンスの延長もしくは改善に止まっている場合が多い. 本来, アセットマネジメントとは投資戦略と実行, 物件管理, 出口戦略と実行という三つのマネジメントを対象とするものである. 本稿では, 社会資本のアセットマネジメントは資産の運用 (投資戦略・出口戦略) と管理 (物件維持管理) という両側面を有すべき, という立場から, メンテナンスやBMS/PMSと社会資本アセットマネジメントの相異を明らかにし, これからの社会資本マネジメントの進化すべき方向を展望すると共に, 資産価値に関わる評価についても一つの提言を行った.
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