本稿は 2021 年 12 月 6 日にご逝去された上村雅之先生にまつわる筆者の思い出を綴ったものである。2004 年 4月の立命館大学への着任以来、様々な場面で上村先生と交流する機会があったが、アイデアを次々と出し、それを実装する姿に感銘を受けた。また、学生たちと接する際も好奇心を第一義とし、そこから研究としてのアイデアを広げていくことをご指導しているように見受けられた。これにより「遊び」に関する多様な視点や発想を生みだすよう支援していた。米国や英国に出張するたびに、上村先生は訪問先で特別講演をお願いされていたが、講演後は Nintendo Entertainment System の愛好者に囲まれ、中にはサインを求める観客もいた。このような状況にあっても上村先生はそれに慢心することなく、むしろそれらをもって「グローバルな社会現象としての NES」に思いを馳せる姿には単純に驚かされた。一般的に、上村雅之先生はゲーム業界における数々の偉業が注目されがちだが、私にとっての上村先生は、ひたすら学生や同僚に対し愛情を持って接する、言わば、ひとりの師であり人生の支柱的存在というのが先立っている。
抄録全体を表示