本論文では,固有値分布のχ^2近似に着目し,自由度の異なるχ^2乗分布の積により新たな固有値分布の近似式を提案する.このχ^2乗の積による近似は,これまで知られている単体でのχ^2よりも数値精度の高いことをシミュレーションによる数値実験により示す.さらに,単体でのχ^2とχ^2の積による近似において,両者による母集団固有値の信頼区間の構成も議論する.後者は,全ての母集団固有値を推定した上で信頼区間を構成する必要があり,推定量のバイアス補正が課題として残るものの,いくつかの母集団固有値の設定においては,単体でのχ^2による信頼区間よりも第1種の過誤が5%に制御できおり,精度が良いという結果である.
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