ムコ多糖症はムコ多糖分解酵素欠損により, ムコ多糖物質が全身のあらゆるところに蓄積するライソゾーム病である. 約6万人に1人の発症率とすると, ほとんど経験することはないと考えるが, 未診断の例も少なくないとされている. 中耳炎や感音・伝音難聴が認められ, 乳幼児期から耳鼻咽喉科医が関与している可能性は少なくない. 年齢が上がるにつれ, 蓄積した部位の症状が表れるため, 顔貌の変化や関節拘縮, 喉頭や気管の狭窄による呼吸障害などが生じる. 治療は酵素補充療法や骨髄移植が主であるが, 血液脳関門を通過しないことや軟骨・骨に沈着してしまった場合はあまり効果が挙がらない. このため, 特徴を理解し, 乳幼児期に受診する可能性の高い耳鼻咽喉科外来にて早期発見されることが期待されている.
また, 外来診療では, 難聴の治療 (鼓膜チューブ留置術や補聴器装用など) は早期に開始するべきである. 睡眠時無呼吸などの上気道狭窄については, 必要があればアデノイド切除や扁桃摘出術を行うが, 呼吸障害の原因は複数の要因が関与している可能性もあり, さらに開口障害や胸郭変形による換気不全など全身麻酔のリスクも高いため, 注意を要する.
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