【目的】脳性まひの評価にはGMFM・GMFCSが現在使用されている。今回、粗大運動能力を測定する脳性麻痺簡易運動テスト(SMTCP Ver.2.20)が開発され(近藤:2006)、その評価と理学療法士(PT)による臨床評価との関係を検討した。
【方法・対象】SMTCPを使用し、手術前およびギプス除去時の術後6週より1回/週で評価した。同時にPTの観察と治療による臨床評価を行い、SMTCPとPTによる臨床評価を経時的に比較した。
症例:13歳男性、脳性まひ痙直型両まひ、右股関節脱臼
手術術式:両股関節解離術・右減捻内反骨切術・右股関節観血整復術
【結果】手術前のSMTCPの得点は臥位19点、坐位6点、四つ這い膝立ち3点、立位2点。臨床評価はどの姿勢においても脊柱右凸側弯し、骨盤後傾・体幹屈曲位で固定していた。上肢支持せずに、下肢が床につかない坐位保持可能。
手術後6週: SMTCPの得点は臥位13点、坐位3点。臨床評価は坐位で介助にて体幹前傾方向の動きが可能、後方への寄りかかりが困難。7週:SMTCPの得点は臥位14点、坐位3点。臨床評価は坐位で後方への寄りかかりが可能となった。8週:SMTCPの得点変化無。臨床評価は坐位で後方へ寄りかかり体幹伸展でき、その姿勢のまま介助にて体幹伸展と骨盤前傾が可能。9週:SMTCPの得点変化無。臨床評価は坐位で胸郭支持にて、体幹伸展が可能。10週:SMTCPの得点は臥位16点、坐位3点。臨床評価は坐位体幹伸展位で、前後の重心移動から左側腹部の伸張を伴う左右への重心移動可能。11週:SMTCPの得点は臥位17点、坐位3点。臨床評価は坐位で机を上肢で支持し頭部を中間位に保持可能。12週:SMTCPの得点は臥位18点、坐位4点。臨床評価は上肢支持なしの坐位で、能動的に体幹伸展位で後方に寄りかかり保持可能。上肢での机支持で体幹伸展が可能。13週目:SMTCPの得点に変化は無。臨床評価は体幹伸展保持が寄りかかりなしで可能。
【考察】SMTCPの各項目において得点は増加し、特に上肢支持による体幹保持項目に改善をみた。臨床評価でも坐位は上肢活動を伴う動きが認められ、体幹伸展保持も可能となった。臨床評価とSMTCPは粗大運動機能で関係が認められた。これらの結果よりSMTCPで数値化した客観的粗大運動評価を経時的変化で捉えることができると考える。
しかし、臨床評価で術前に比べ体幹の抗重力伸展や側腹部の伸張を伴う重心移動など、体幹を用いた分節的な動きが可能になる変化を認めたが、SMTCPではそれらの運動機能は評価しきれなかった。これは粗大運動の基礎となる体幹の分節的・選択的運動は捉えきれないためと考える。そのため治療的な評価としてSMTCPを用いるには詳細なPTによる臨床評価を合わせて用いるとより有効に使用できるといえる。
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