ヌクレオチドオクタマーの合成を考えるとき,二つのタイプのテトラマー(X型,Y型)をそれぞれ256種ずつ用意すればそれらの組み合わせ合成によって任意の配列のものを一段の合成でつくりうる。本研究ではこの原理を実現させるために,まず2型のテトラマーを実際に合成し,それを用いたオクタマーの簡便合成の検討を行なった。X型に,DMTrN1*pN2*pN3*pN4*Po-またY型に,HON1*pN2*pN3*PN4*bzを採用した。(ここで,DMTr,bz,*はそれぞれ保護基を示す)。テトラマー0.4μmoleのスケールで簡便合成を行なった結果,検討の範囲で収率は3~90%で,酵素的DNA合成法のプライマーとしては十分な収量と純度であることが示された。合成されたオクタマーのプライマー機能は,実際に酵素的DNA合成に用い,DNA中の特定の部位からの鎖伸長が行なわれることで確認された。本方法で合成されたDNAフラグメントは,プライマーリレー法のようなDNA塩基配列決定,DNAの識別や探索,遺伝子の発現調節などで広く有用である。そのさい,準備すべきテトラマーは512種の一部のみで間に合い,一般にテトラマーは効率的DNA合成の基本ブロックとしての最適サイズであることなどが考察されている。
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