本学小児歯科をリコール中に顎関節症と診断された小児について発症前の咬合を含め,顎運動,筋活動の各変化を検討した.
患児は12歳3カ月の女子で右側顎関節部疼痛および開口障害を主訴として来院した.患児は3歳から本学小児歯科を受診し,齲蝕治療後は定期的な検診を受けていた.それまで,顎関節部の疼痛や開口障害を経験したことはなかった.
発症時,早期接触は上下右側第1小臼歯,第1大臼歯に認められ,第2大臼歯は上下顎とも左側が萌出開始していた.筋と顎関節のrelaxaticnを図る目的でバイトプレーンを装着した結果疼痛は次第に軽減し,早期接触部位は主に左側上下第1大臼歯間に強く認められていた.同部の咬合調整と咬合再構成を行った結果, 疼痛は消失し, 開口距離は50mmまで回復した.また顎運動,筋電図所見にも著明な改善が認められた.
本症例の顎関節症発症の原因としては,左側第2大臼歯の萌出による咬合変化と左側第1大臼歯の早期接触が最も疑われた.
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