1993 年 31 巻 1 号 p. 102-109
片側下顎第2乳臼歯の晩期残存により,顎関節症を引き起こしたと考えれた2症例について,晩期残存歯の抜歯のみによる治療および観察を行った結果,症状(顎関節痛,開口障害,顎関節雑音)の消退と同時に歯列および咬合において特徴的変化が観察された.すなわち
1)正中偏位の改善
2)上下顎歯列の非対称の改善
3)左右咬合関係の非対称の改善
4)上顎歯列弓に対する下顎歯列弓のバランスのとれた位置へのローテーションが認められた.
以上より乳歯の晩期残存が永久歯の生理的な咬合変化を障害した場合,機能的咬合異常を引き起こし,その結果小児における顎関節症の原因となり得ることが示唆された.