1994年から神奈川県の各地でフジの蕾と葉に虫えいを認めたので, その寄生種とその生態について調査した。蕾の虫えいは直径3.0~7.0mm, 虫えい内の幼虫数は1~16匹で, そのほとんどが蕾の部分であったが, 花軸や花梗に生じたものもあった。総状花序の先端1/2~1/3の蕾に形成された虫えいは, 10~20%開花した5月上旬には落下し始め, 虫えい内の幼虫も脱出し始めて, 5月中旬にはほとんどの幼虫が脱出した。もう一方の葉の虫えいは, 直径3.0~6.0mm, 虫えい内の幼虫は1~2匹であった。その虫えい内の幼虫は, 蕾の虫えいより遅れて脱出が始まり, 5月中旬には脱出し終わり, 虫えい部は褐変した。虫えいの形態と幼虫の生態から蕾の虫えいは, フジツボミタマバエ
Dasineura wistariae Mani によるフジツボミフクレフシであった。また葉に生じた虫えいは種未同定のタマバエによるヤマフジハフクレフシ (フジハフクレフシ) であった。虫えいを放置した鉢内土壌からの成虫の羽化は, 両種とも翌年の4月上旬~中旬で, フジツボミタマバエは雌雄比が1.2:1であった。一方, ヤマフジハフクレフシからは雌成虫のみが少数羽化したが, 雄成虫は認められなかった。
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