本邦の介護施設入所者の28.5%が嚥下障害を有する。嚥下障害は、地域医療の健康管理に重要な課題となっている。われわれは、地域住民と介護福祉施設および在宅医療介護スタッフに対して、嚥下障害患者に対する介護教育プログラム(以下研修プログラム)を提供した。本研究は、川崎北部地域において嚥下障害患者介護に関する基礎知識と考案した研修プログラムを評価することを目的とした。
嚥下障害患者のための口腔ケア、嚥下食、食事介助に関する基礎的な技術を習得するための研修プログラムに看護師19名、介護福祉士17名、介護支援専門員8名および地域住民26名が参加した。研修プログラムの効果は講義前後に20問の質問アンケートを実施して評価した。
講義前は4グループで食事介助の知識が低く、特に看護師を除く3グループで低かった。講義前の20問正答率は、グループ間で差はなく講義後は4グループとも改善した。講義後は全グループの正答率が有意に改善したが、地域住民の食事介助に関する正答率は他と比較し有意に低かった。嚥下食に関する講義前後の正答率はグループ間で差はなかった。口腔ケアに関する講義前後の正答率は地域住民において有意に改善した。食事介助に関しては、全グループにとって知識獲得に最も効果があった。嚥下障害患者介護において看護師や介護福祉士に比較して地域住民は最も基礎的な知識獲得となった。
本研究により、提供した研修プログラムが嚥下障害患者介護の専門的な知識改善に有効であると考えられた。
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