本研究は, 31年以降の泉南タオルエ業=中小零細工業の展開を地域(泉佐野市を中心に)との関連で考察したものである. I. タオルエ業は設備制限下に活況を呈し, 6年には約5割の織機の増設が許可された.泉佐野市のタオルエ場数は, 31年の176から39年の260へと急増した.タオル工業は近代化業種に指定され,近代化が要請されている. II. 泉佐野市の工業は,量的に拡大し,大・独占資本への従属を深めた.工場誘致条例はタオルエ業にとっては直接関係のないものであった.
III. (1) 小零細タオル工場の群生.農地転用の進展及び玉葱作の不安定性を主要因として,上層農家の家族労働による「タオルエ業+農業」の形態での創業が多く見られた. (2) 小零細工場の多くは,農業を兼営し,土地売却金の事業資金化・自己所有農地の工場敷転用・農協よりの資金借入・農業自給生産に依存している. (3) タオル企業間の下請関係は非常に少ない.企業は次の階層に区分される.小生産者的経営(ほぼ織機10台以下に相当)約190, 前者の性格を残す小資本家的経営 (10~20台)約120, 資本家的経営 (21台以上)約80工場. (4) 紡績資本の系列化は上層工場に見られるが,製品・生産構造の点から今治タオル工業におけるほどではない. (5) 近代化は主として借入金に依存し, 31台以上の上層工場を中心に行なわれている.小零細工場のほとんどは近代化よりとり残されている.
IV. (1) 泉南地方には,新中卒者の著しい流入が見られ,その多くが大工場に雇用されている. (2) タオルエ業においては,小零細工場は主として労働者家庭の中高年女子を,上層工場は主として地元外新卒者を雇用している. (3) タオルエ業の労働条件は他工業と比べて悪く,労働力不足対策・不況対策として改善されたが,未組織の下での時間給低賃金・長時間労働が一般的である.この条件がタオル工業の重要な基盤である.
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