機械パルプの光による色戻り抑制能を有する2種の菌,
Phanerochaete chrysosporiumと
Fusarium solaniのプロトプラストによる細胞融合により, 親株よりも色戻り抑制能の高い融合菌の作出を試みた。
P. chrysosporiumからのプロトプラストの最大収量は細胞壁溶解酵素セルラーゼ “ONOZUKA” R-102%, ノボザイム234 2%とキチナーゼ0.2%を組み合わせた場合に得られた。また,
F. solani からのプロトプラストの最大収量はセルラーゼ “ONOZUKA” R-10 2%とノボザイム234 2%を組み合わせた場合に得られた。プロトプラスト調製時にマンニトールと硫酸マグネシウムの2種の浸透圧調節剤を使用したが, 硫酸マグネシウムの方が優れた浸透圧調節剤であった。
P. chrysosporiumと
F. solaniからのプロトプラストをポレエチレングルコール法により細胞融合した。最小培地上で生育してきた融合菌を還元性色素, 2, 6ジクロロインドフェノールを含む麦芽寒天培地上でスクリーニングし, 色戻り抑制能を有する2種の融合菌 (融合菌1, 2) を得た。アイソザイム分析により, これらの融合菌は両親株からの融合菌であることを確認した。融合菌からの菌体外粗酵素液とメトキシ-p-キノンとの反応性を調べた。その結果, メトキシ-p-キノンからメトキシヒドロキノンと3, 4ジメトキシフェノールの生成が見られたが, 3, 4-ジメトキシフェノールの生成は少なく殆ど生成しない場合も認められた。
融合菌1, 2から得られる菌体外粗酵素によりTMPの光による色戻りが大幅に抑制された。融合菌1はほぼ完全に色戻りを抑制し, 融合菌2も色戻りを81%抑制した。両融合菌の色戻り抑制能は親株のそれらよりも高かった。しかし, 融合菌は継代を重ねるとその色戻り抑制能は大きく低下した。
抄録全体を表示