本報では, 主浴室と内房浴室をもつ集合住宅において, 浴室の使用実態と問題点を明らかにし, 今後の韓国都市集合住宅の入浴空問のあり方を考察するために, 住様式の視点から入浴空間の検討を行った.その結果は以下のとおりである.
(1) 主浴室にある設備として浴槽以外に, シャワー設備, 洗面台, さらに入浴道具であるたらいの使用用途をみた結果, 主浴室は入浴 (シャワー入浴を含む), 洗髪, 足洗いのための空間として利用されていることがわかった.さらに手洗いの洗濯空間として併用されていることが明らかになった.
(2) 主浴室の3点1室の形式について, 次のような問題が明らかになった. (1) 浴槽を本来の入浴に使わず, 他の用途 (貯水や, 脱衣後の洗濯物の一次収納) に転用している例が一定の割合で認められたこと, (2) また, 面積や設備の改善が必要とされていること, (3) さらに, 便所の分離や脱衣空間の確保という平面計画上の問題が存在していることがわかった.
(3) 現在め主浴室に対し, (1) 満足している者が6.5割存在し, それは家族人数の少ない家に多いこと, (2) 一方, 不満をもっている者は3.5割存在し, 画一的な平面構成に由来する不満が存在することが明らかになった.
(4) 主浴室に対する改善要求は, 居住者の入浴慣習, 家族人数, 家族型などによって内容に違いがあり, それらを踏まえると, 次のような浴室空間の型が考えられる. (1) まず, 現在の主浴室に対し, 便所の分離や, 脱衣空間を要求する居住者の存在を考え合わせると, 脱衣室を設けそこに洗面台を併置し, 浴室と便所は別にするという, 三つの機能を分離した型, (2) 面積の制約がある場合は, カーテンやパーティションなどのしつらいを用いて空間を仕切る型, (3) さらに, 住宅内浴室でシャワーのみの入浴をする居住者や, 浴槽を入浴に使わず他の用途に転用している居住者の存在から, 浴槽のかわりに, シャワー設備とする型, 以上三つの型が示唆される.なお, 主浴室で行われている手洗い洗濯は, 洗濯機のある多用途室に洗濯槽を設け, そこでその行為を行うことによって, 入浴空間としての主浴室の専用性が高められよう.
(5) 内房浴室は, 寝室圏にあることに肯定的な評価が認められ, 若い世代に積極的に受け入れられる動向がみられる.一方, 内房浴室に対しては, 主浴室と同様に面積や設備の改善が必要とされている.
(6) 内房浴室については, 次のようなことが考えられる. (1) まず, 内房浴室を必要としない居住者の存在から, 内房浴室をなくし, 主浴室のみとし, その型は3機能を分離した型とすること, (2) 一方で, 現状の内房浴室に対し浴槽の設置希望が多いことや, 湯につかる習慣を考慮すると, 内房浴室に浴槽を設置した型が考えられる.この場合は浴槽と洗面台・便器の問にしつらいを用いて領域分離をすることが望ましい.
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