銀塩写真感光材料への放射線露出では,銀原子のサイズが小さくて現像不可能な亜潜像核が多数形成され,銀クラスターの分散による感度の低下が起こりやすい.この亜潜像核を再編成して感度を上昇させるのを目的として,低温赤色光後露光補力の効果を調べた.重粒子線を照射した写真フィルムに,照射後-30°Cの低温で670 nmの赤色光を長時間露光すると,飛跡のグレインデンシティが増加した.この作用は潜像が赤色
光露
光で退行するHerschel効果と類似しており,亜潜像核が赤色光を吸収すると銀原子の電子がハロゲン化銀の伝導帯へ励起されるが,この励起電子を他の亜潜像核が捕獲して銀原子を形成し,現像可能な潜像核に成長する.赤色
光露
光を-30°Cの低温で行うことにより,化学増感中心の持つ赤色光感度が抑えられた.亜潜像核が形成されやすいエネルギーロスの小さい荷電粒子の照射や,現像力の弱い現像液を用いたときなど,グレインデンシティが小さい場合であるほど大きな補力効果が得られた.
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