コンピュータ技術の急速な発展とデジタル化技術の進歩により, 印刷産業の業態は, 急激に変化しつつある。印刷物の製造工程に目を向ければ, 特にフィルム原板を作製する製版工程における変化が顕著である。コンピュータ・パワーの指数関数的な進歩により, DTP (Desktop publishing) にて, デジタルデータを容易に処理することが可能となり,“モノ作り” の工程から, 形のないデジタルデータを処理・加工・変換・保存する工程へと大きく変貌しつつある。また, オフセット印刷用の刷版を作製する工程においても, CTPの開発により, デジタルデータを用いてダイレクトに印刷版を作ることが可能となり, 急速に普及しつつある。これら技術の発展によって, 工程統合化の方向性が明確になってきており, 生産効率の向上, 製造原価低減等に大きく寄与している。更に, この流れは, 印刷工程にも及びつつある。オフセット印刷機をベースに, ダイレクト・イメージング装置を搭載した印刷機の開発, あるいは, 電子写真・インクジェット方式を中心にしたカラー高品質対応可能なデジタル印刷機の開発等が積極的に進められ, 小ロット, オンデマンド印刷分野の生産機として急速に普及しつつある。一方, これらの動きとは別に, 印刷桑界における大きな課題として, 環境対策が挙げられる。地球環境保全及び職場環境改善を目的に, 使用材料におけるVOCs (揮発性有機化合物) の削減・排除への取組みが積極的になされてきている。具体的には, 有機溶剤の代替として大豆油の使用が急速に拡大し, さらに水性インキの開発・導入も進展しつつある。ここでは, これら業界の動向を踏まえ, 市場及び技術的視点から報告する。
抄録全体を表示