最近急速に進行している日本の石炭鉱業合理化が産炭地域,特に炭鉱労働者にいかなる影響をもたらしたかを明らかにする一端として,常磐炭田の合理化に伴う離職者の動向を追跡した.
調査対象としては,ビルド鉱の例として常磐磐城の38年2月の合理化離職者(1328人),スクラップ鉱の例として,古河好間の閉山,第2会社化による離職者(580人)と多賀地区の中小零細炭鉱の閉山に伴う離職者(759人)を選び,特に,最後の中小零細炭鉱の閉山離職者の動向の研究に力を入れた.
以上の離職者の動向の調査・分析の結果,以下の諸点が主要なものとして明らかになった.
第1に,失業率,長期失業率が高い.
第2に,石城北部地区大炭鉱離職者は,地元の第3次産業と京浜の鉄鋼・金属・機械工業に,多賀地区の中小零細炭鉱の場合は,地元の石炭鉱業,日立製作所下請工場,第3次産業に主に就職している.
第3に,失業率や再就職先と離職者の年令・性・前職種との関係をみると,明確な傾向が指摘できるが,その中で一般に中高年男子層が最も大きな犠牲を強いられていることがわかる.
第4に,石炭鉱業に再就職する場合,一般に高年層は組又はスクラップ鉱に,中年層はビルド鉱に就職する傾向がある.
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