複数の知識エージェントが関わる医療現場での言語コミュニケーションは, 複雑で重要な内容の効果的な伝達を可能にする半面, 誤解とエラーの発生源でもあり, 医療の安全を脅かすこともある. 言語コミュニケーションでは, 意図の認識と意味の交換という2つの要素が重要であり, 意図と意味に関する知識体系を整理することで, 言語コミュニケーション上のエラーの発生を減少できる可能性がある. 知識の体系化をおこなううえで, 有用な概念やツールを提供するのが, 近年発展してきているオントロジー研究である. そこで本稿では, オントロジーに関する研究の中から, 医療の場におけるコミュニケーションに役立つ知見を話者の意図という観点から再整理し, 医療の質と安全にどのように貢献できるかを考察する.
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