2012 年 26 巻 3 号 p. 23-33
要 旨
本研究の目的は,がん患者のペインマネジメントに対する取り組みの様相を明らかにし,主体的取り組みを促進する看護援助を検討することである.がんによる痛みを体験している患者7名を対象に,面接調査法と参加観察法を用いてデータ収集し,質的帰納的に分析した.その結果,痛みのある患者が直面する困難には,「痛み自体がもたらす問題」「鎮痛薬使用の問題」「除痛援助に対する問題」などがあった.また,困難に対する取り組みには,その結果から困難が解決された取り組みと困難が解決されなかった取り組みがあった.困難が解決された取り組みから,痛みのあるがん患者は,痛みの原因と痛み治療や除痛援助の効果を自己吟味し,その結果をもとに自らの意思を働かせて行動する自己指示的取り組みを行っていること,この行動には,患者自身の痛みの理解と治療法に関する知識が必要であり,さらに患者の取り組みを後押しし結果を保証する医療者の存在が重要であることが明らかになった.これらの結果から,がん患者の主体的取り組みを促進するための看護援助として,疼痛緩和に関する知識を提供し患者自身の痛みに関する学びを強化する教育支援,患者が自己指示的行動を志向できるようなコミュニケーションと取り組みへの継続的な支援が必要であることが示唆された.