水に溶けている無電荷金属錯体及び多環芳香族炭化水素をポリテトラフルオロエチレン(テフロン)製フィルムの表面に濃縮する方法を提案した.クロロホルム(10ml)を入れた試験管と試料水溶液(約500ml)を入れたガラス製筒型
分液漏斗
を空気ポンプを組み込んで連結する.水面にテフロン製シールテープ(厚さ0.1mm,幅1.3cm)を浮かべ,クロロホルム蒸気を一定時間,水中に通気・循環する.水相を
分液漏斗
から排出させ,
分液漏斗
壁及びテープを5mlのクロロホルムで洗浄し溶質を溶離する.鉄(III)-8-キノリノール(オキシン)錯体では,10及び20cm長のテープ共存下1時間の通気で,それぞれ89及び96%が漏斗壁とテープからの合計として回収された.ニッケル(II)-ジメチルグリオキシム錯体では,長さ10cmテープ共存下1時間の通気で32%しか回収されず,通気時間を2時間にしても回収率は62%にとどまった.又,テープを長くしても回収率の向上は認められなかった.しかし,再抽出操作(10cmテープ,1時間通気)を4回繰り返すことによって回収率は76%に達した.アントラセンでは1.5時間の通気で89%,ナフタセンでは1時間の通気で92%が,
分液漏斗
壁とテープ(長さ40cm)からの合計として回収された.ナフタセンの場合,クロロホルム蒸気の代わりに,空気を30分間,通気・循環するだけで,83%が漏斗壁とテープ(40cm)から回収された.ナフタレンは,その揮発性のために回収率が低い.
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