地域総合整備事業債(以下「地総債」という。)を含めた一般単独事業債の元利償還等に係る費用を交付税の基準財政需要額に算入するという交付税の実質的な補助金化により,国は,自治体の普通建設事業の単独事業を誘導してきた。一方,バブル経済の崩壊以降は,自治体も厳しい財政状況に見舞われ,この単独事業を削減せざるを得ず,一般単独事業債の発行額も1990年代後半以降,減少していく。
こうした中で,実際にどのような要因に基づき,普通建設事業の単独事業に取り組むのか,指定都市の一般単独事業債の発行を取り上げ,計量分析を行つた。具体的には,一般単独事業債の発行に影響を与える要因として①基準財政需要額における事業費補正額,②自治体の財政状況などを取り上げ,1989年度から2014年度の26年間について,地総債が廃止された2002年4月を境として前後の比較を行つた。
その結果,①について,事業費補正額の割合が高いほど,地総債の発行が行われていたこと,②について,前期では,経常収支比率が高く,投資余力がないにもかかわらず,一般単独事業債を発行し,事業に着手していたこと,公債費負担比率の上昇が一般単独事業債の発行を抑制することが指摘できた。このことからは,国の誘導方策が資源配分をゆがめていた可能性があるといえる。
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