日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
過疎対策事業債の発行要因に関する実証分析
宮下 量久
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 26 巻 p. 61-86

詳細
抄録

 本稿では,過疎地域がどのような要因で過疎債を発行するのかを定量的に明らかにした.過疎債の元利償還の7割が普通交付税の基準財政需要額に算入されるため,過疎債は過疎地域に対する財政支援という側面はあるものの,元利償還における負担を他の地域住民に転嫁させている恐れもある.分析の結果,過疎債の交付税措置の少なかった過疎地域ほど過疎債を発行していた.また,実質公債費比率は過疎債やその他地方債の発行に負の有意な影響を与えるものの,過疎地域は実質公債費比率に基づいて過疎債発行をその他の地方債よりも抑制していない傾向も確認された.さらに,過疎地域では高齢化が過疎地域の平均値よりも進むと,過疎債が顕著に発行されていることがわかった.具体的には,65歳以上人口比率が4割近くになると,過疎地域は過疎債を優先的に発行する傾向がみられた.今後,高齢化はさらに進展すると見込まれるため,過疎地域の多くが過疎債に依存した財政運営を強いられると予想される.

著者関連情報
© 2019 日本地方財政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top