われわれは迷入歯根が原因で, 右側顎下部の腫脹と疹痛を繰り返した症例を経験したので報告した。 症例は42才の女性で, 某歯科医院にて抜歯を受けた後, 発熱, 嚥下痛, 右側顎下部の腫脹などが生じたため, 某病院外科にて加療を受け一時消退した。しかし, その後も炎症症状の再燃を繰り返したため, 抜歯6ヶ月後に当科を受診した。初診時, 右側顎下部に鳩卵大の腫瘤が認められ, 双指診により相当口底部に大豆大の骨様硬の腫瘤が触知され, また舌右半側の知覚障害と味覚異常が認められた。X線所見より相当下顎骨下縁部に歯根様X線不透過像が認められたため, 消炎後, 全身麻酔下に摘出した。術後, 2週間後には右側顎下部の腫脹と疹痛ならびに舌右半側の知覚障害は消失し, 3ヶ月後には味覚異常も緩解し, 経過良好にて現在に至っている。
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