リンは細胞膜や核酸などに含まれる必須のミネラルであり,その恒常性は精密にコントロールされている.しかしながら,慢性腎臓病患者では,病態の進行とともにリンの排出ができなくなり,血液中リン濃度の高い状態が継続する(高リン血症).高リン血症では,リン濃度を正常に保とうとするメカニズムが働き,二次性副甲状腺機能亢進症を発症する.その結果,骨折リスクが上昇するとともに,異所石灰化を引き起こす.これまで,高リン血症に対する薬剤開発は,腸管における吸収阻害に焦点を当てたものが中心であった.長期の腸管でのリン吸収阻害は,尿細管でのリン再吸収の亢進を招くことも報告されており,異なったメカニズムに基づく薬剤が求められている.最近Filipskiらが報告した,近位尿細管におけるリン再吸収を担うリントランスポーターNaPi2aの選択的阻害剤について,本稿で紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Filipski K. J.
et al.,
ACS Med.
Chem.
Lett.,
9, 440-445(2018).
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