【目的】
沖縄本島南部に位置する
南城市
は、県都心部の那覇から約12k mに位置する美しい自然環境に恵まれた人口約4万人の都市である。琉球王国時代の最高の聖地とされる世界遺産「斎場御嶽 (セイファーウタキ)」や、古代琉球の創世神が天から降臨し国づくりを始めたとされる神の島「久高島」などをはじめ、沖縄の精神性の象徴が
南城市
には多く存在している。近年、このような同市の恵まれた自然環境と豊かな精神文化を活用した住民の健康増進、観光事業者、医療機関との連携によるウェルネス事業が推進されてきている。本研究では、
南城市
の精神文化資源を活用したメンタルヘルスケア対応、社員の生産性向上に寄与する研修モニターツアーについて、主に心理的効果評価の結果について報告する。
【方法】
平成24年11月に実施された沖縄県外大都市圏に在住する成人女性32名 (平均年齢 37.3歳)を対象に、沖縄県
南城市
の地域精神文化資源を活用した滞在プログラムを構成し、ツアー開始前の11月25日、およびツアー最終日の11月27日に自記式によるアンケート調査を実施した。調査は、気分プロフィール検査 (POMS)の短縮版を用い質問項目への回答漏れの見られた調査表4件 (4名分)を除く、28名を本検証における分析対象とした (平均年齢 35.7歳)。統計解析は対応のあるt検定を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
モニターツアー前後のPOMSの得点について緊張は9.0±4.41から4.0±2.62 (t=6.00, p<0.01) , 抑うつは5.6±4.21から2.0± 2.56 (t=5.10, p<0.01) , 怒りは4.3±3.00から1.4±1.83 (t=4.57, p<0.01),疲労は8.1±5.68から4.1±3.79 (t=4.00, p<0.01), 混乱は8.5±4.20から4.4±2.86 (t=4.31, p<0.01)とい ずれも有意な低下を認めた。活気は8.5±4.27から12.7±4.74 (t=-4.40, p<0.01)と有意に上昇した。
【考察】
POMSにおける6つの気分尺度について、ツアー前、ツアー後を比較した結果、「緊張-不安」、「抑うつ-落ち込み」、「怒り-敵意」、「疲労」、「混乱」について、ツアー後の得点は減少していた。得点の減少は各項目の改善あるいはプラスの方向への変化の可能性を示唆する。いずれの項目においても統計的に有意な差が認められた。「活気」についてはツアー後の得点は増加しており、ツアー後の活気の向上を示唆する結果であった。
【結論】
ウェルネス健康経営の観点から、当メンタルヘルスケア対応、社員の生産性向上に寄与する研修ツアーは有意義である。
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に則り研究の目的や方法について説明を十分に行い、書面にて同意を得て実施した。
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