観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
観光まちづくりの再分節化
混在概念の弁別とさらなる外延
越智 正樹
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2021 年 9 巻 1 号 p. 23-37

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抄録

観光まちづくり論は四半世紀の蓄積があり、その全体をレビューする優れた諸論考も公刊されてきた。それでもなお我々が新たな地平を求めると言うとき、そこにはいかなる閉塞感や議論の鈍化が存在しているのだろうか。
これを考察するために本論はまず、観光まちづくりの英訳語法の分析を行い、その結果として2点の概念混在を明らかにする。 1つはcommunity developmentとtown planningであり、もう1つは観光まちづくりと観光地域づくりである。その上で沖縄県の2つの事例(首里城の焼失、南城市小谷の集落歩き観光)を取り挙げ、上述の概念混在に留意した考察を行うことで、観光地域の危機をベースとした観光まちづくりと、観光振興から降りる観光まちづくりという、新たな論点の可能性を論じる。
最終的に本論が主張するのは、観光振興/観光地域づくりとcommunity development/town planningとは互いに離合を繰り返すものであり、その離合の磁場を表象するのが観光まちづくりではないかということである。混在概念を常に再分節化することを通じて、その離合の運動を正確に把捉することが、新たな地平を開くのではないだろうか。

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