症例は79歳, 男性. 主訴は, 発熱, 腰痛, 右側腹部痛.既往歴に糖尿病があったが, 治療は中断していた.左精索静脈瘤切除および, 左慢性副睾丸炎に対し, 左睾丸摘出目的で入院.術後, 難治性の尿路感染症を合併した. 同時に, 糖尿病のコントロールは著しく不良で, インスリンを投与した. それから約3週間後, 発熱, 腰痛, 右側腹部痛を訴えた. 白血球数は, 22, 200/mm
3と著増し, 腹部CTで右腸腰筋に低吸収域を認め, 腸腰筋膿瘍と診断した. 各種抗生剤を全身投与したが改善せず, 後腹膜経由で切開, 排膿した. 膿汁の培養により, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (以下MRSAと略す) を検出した. 引き続き抗生剤の全身投与を続行.ドレナージの効果があり, 腸腰筋膿瘍は治癒した. これまで糖尿病に合併した腸腰筋膿瘍の起炎菌としては, 黄色ブドウ球菌やβ 溶連菌などが本邦で報告されているが, MRSAが検出された症例は, 我々が検索した限り, 現在のところ見当たらない.
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