中国産野生マウスM. m. musculus Sub-Jyg (JYGマウス) に高率に発生する乳癌の特性, 特に諸臓器への高率な転移能について報告した。兄妹交配18代での乳癌発生率並びに発癌月齢は89%, 約9ヵ月であった。検索した乳癌19例はいずれも髄様腺管癌または乳頭状腺管癌 (面疱癌) の組織像を呈し, 核分裂像も著明で形態学的に非常に悪性度が高かった。19例中10例 (53%) で肺に, 4例 (21%) で肝臓に, 3例 (16%) で脾臓に乳癌の転移が見られた。また, 種々の臓器に多量の乳癌ウイルス抗原 (MMTVgp52) ならびにMMTV粒子の発現が認められた。乳癌の転移実験にC3H系マウスがよく用いられているが, JYGマウスのような肺転移のみならず, 肝臓, 脾臓にも転移巣が認められる例は少なく, JYGマウスが新たな乳癌の転移モデルとして有用である可能性が示唆された。
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