【目的】学習環境をデザインすることは環境に能動的に働きかける活動を通して相互作用しながら人間的諸能力を獲得する学習を効果的にする。理学療法士養成校においては臨床実習に期待を寄せるところが大きいが、学内教育における情意教育は有益な臨床実習を行なう上で重要となるため、学内での情意的側面と学習デザインという観点について鑑みた。
【方法】本校学生46名、平均年齢20.7±2.3歳。5~6名で1グループとし、学力成績が平均になるように編成した。グループワークを1年間行なった後、グループワークの利点と欠点を情意的側面に視点を置き、自己認識調査とアンケート調査を行った。なお、自己認識度はχ
2検定及びT検定、相関係数を用い、アンケート調査はK-J法を用いた。
【結果】最も伸びたと感じた情意項目は「関係性」33%、「責任感」22%、最も伸びなかったものとして「言葉使い」54%であった。各情意項目間とグループ間で情意項目の伸びに差は認められなかったが、個人レベルでは伸びたと思われる情意項目の種類に有意差が観られた(P<0.01)。また、「積極性」が「責任感・関係性・言葉使い・感情面」と、「責任感」が「規則性・関係性・感情面」と相関を示した。アンケート調査では利点として「他人の意見により自分の意見が修正される」部分が強調され、欠点として「物理的・時間的制約や連帯責任の重圧」が挙がったが、学力的観点からの編成法に40%が肯定的であった。
【考察】集団的教育の利点に学習過程の豊潤化による視野の拡大があるが、アンケート結果から他者の影響による自己修正が挙げられていることから学力的に平均化したグループ学習でも当てはまることが伺われるが、有意差が認められない原因として年齢差が小さいために経験や知識の制約があると考えられる。また、社会性が身に付くことも集団教育の利点であり、自己認識調査から関係性や責任感の重要性が挙げられていることからも分かるが、有意差は認められない。その理由としてグループ編成の観点が情意領域を無視した編成方法によるものと思われる。しかし、講義終了後の情意面にグループ間の差がなかったことは、実験室的空間における外部からの物理的制約が関与したものと考える。第36回から4年間にわたり理学療法学術大会において各実習の情意項目の特徴を発表してきたが、いずれにおいても中核となる情意項目の存在が認められたが、これはグループの構成人数、年齢的なもの、空間の広さによる視野の範囲、指導者との立場関係などが影響したものと考える。つまり、集団と個人の学習環境の違いではないかと推測する。
【まとめ】成績の平均化しただけのグループ編成法では特定の情意項目の伸びは期待しにくく、あらためて臨床実習という環境説的要素が情意教育に関連深いことが示唆された。今後、臨床実習につながる情意教育のあり方が学内教育において検討される必要がある。
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