唇顎口蓋裂患者の前歯部欠損に対する補綴処置としては, これまで金属焼付けポーセレン冠を支台装置とする固定性の架工義歯や可撤性のパーシャルデンチャーが多く用いられてきた.しかしながら, 支台歯の歯髄ならびに歯周組織に与える影響を考慮した場合には, 歯質の切削量を最小限度にとどめる必要がある. このことは特に若年の唇顎口蓋裂患者において重要な問題である.
そのため, 歯質の削除量の少ないピンレッジを支台装置とすることも推奨されてきたが, 金属と歯質の両方に接着性を有するレジン(4-METAレジン)を利用することにより, ほとんど歯質を削除することなく架工義歯を固定することが可能となった.
本報告においては, 矯正処置を終了した2名の唇顎裂患者の前歯部の欠損に対して4-METAレジンを応用した固定性架工義歯を試みた.支台装置としては, 欠損部隣在歯の舌面に厚さ0.3mmの舌面板を設定し, 欠損部の架工歯は金属焼付けポーセレンとした.使用金属としてはニッケル・クロム合金を用い, 接着強度を増すため被着面の酸処理を行なった.一方, 歯面はエッチングを行ない, 4-METAレジンで架工義歯を接着した.
装着後, 各々, 6ケ月, 2ケ月を経過しているが現在のところ良好な結果を得ている.
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