以前, われわれは相互転座t(4;5)(p15.1;p14.2)由来の染色体異常が多発奇形の原因となった症例を報告した. 今回はこの症例の血縁者4例の染色体解析の追加と家系構成員への聞き取り調査を行い, 正確な家系図の作成を試みた.
染色体解析の結果, 本家系構成員の中から新たに3例の均衡型相互転座t(4;5)(p15.1;p14.2)保有者が判明した. また聞き取り調査の結果,この家系に6例の流産および死産と生後1日で死亡した児が2例あることが判明した. すなわち, この家系には正常出産でかつ臨床上の異常をともなうことなく受け継がれていく相互転座t(4;5)(p15.1;p14.2)が存在し, その上この相互転座が3世代以上にわたり保存され, 相互転座に起因した可能性が否定できない流産と死産と多発奇形が頻回におこっていた.
本症例のような相互転座をはじめとする微細な染色体異常を検出するためには, 形態学的な染色体解析技術のみならずFISH (fluorescence
in situ hybridization)法によるDNAレベルの病理診断法を組み合わせた適切な検査の施行が有効である. さらに既応歴の調査および家系図の作成が重要であることも再確認した.
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