本稿は、「伝統的な言語文化」を相対化することの意義と、そのリテラシーの育成にTOKの援用が有効であることを、世界俳句(HAIKU)の授業実践によって検証したものである。学習者は、「HAIKUは『俳句』といえるか」を中心に、「なぜそう言えるか」「どの程度翻訳は可能か」等TOKを意識した問いの検討を通して認識を変化させた。当初は「日本固有の文化」として形式的条件からHAIKUを「俳句」ではないと主張していたが、機能的意義の気づきを得てHAIKUへの理解を深め、外国の俳人への敬意が生まれた。これは同時に、自文化の価値の再発見となっている。こうした自文化を絶対視する態度を保留し、多角的に自文化の独自性と普遍性を吟味して判断することは、「伝統的な言語文化」を相対化して捉えるリテラシーの獲得といえ、主体的に「伝統的な言語文化」を継承する役割を担うことにつながる。TOKを意識した問いは、学習者に前提を自覚させ、知識をメタ的に吟味し、主体的に判断する姿勢を促したといえる。
子どもは、乳幼児期から養育者の愛の言葉=言霊によって、日常の言葉や文学言語を習得しているので、垣内松三の「言霊」論による文学言語の指導が適していると考え、自証体系を方法原理として、「スピリットから下降する」読み方によって授業を行っている。
この方法が、田中実理論と、どう重なり合っているか、特に西洋の一神教と日本の多神教との関わりに重点をおいて捉え、〈第三項〉へ歩む適切な道を探っている。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら