目的 本研究の目的は、重症心身障害児(者)に対して家族が “うたうタッチケア”を行い、その効果を施術者の心理的変化の視点から明らかにすることである。 対象 A重症心身障害児(者)を守る会在宅会員の学童期女児と母親、青年期男性と母親の2事例。 方法 2016年8〜10月、1週間に1回家庭訪問を行い、対象者に母親がタッチケアを行う様子をビデオ撮影して観察した。奇数回をタッチケアのみ、偶数回をうたうタッチケアとし、合計10回行った。うたうタッチケアは、対象者の反応を見ながら、施術者の呼吸と動きが一致するよう施術者自身がうたいながら行った。うたの拍子は手の動きに合わせ予め考慮、2拍子は手指足趾・上下肢で「虫の声・
夕焼小焼
」を、3拍子は胸腹部・背部で「ぞうさん・海」を使用した。全行程終了後、母親に対してうたうタッチケアの効果についてインタビューを行った。 結果 2事例とも、日常親子のスキンシップを取る方法が難しいと感じていたが、うたの有無にかかわらずタッチケアを通して十分にスキンシップを取ることができ、その関わりを持つ時間の重要性を痛感していた。うたいながら施術することの難しさを感じながらも、徐々に慣れることで日常生活に取り入れていくなど、前向きに実践するようになった例もあった。また童謡・唱歌は幼児・学童向けのうたというイメージがあったが、歌詞の持つ温かさや優しさを感じながら行えたことから、うたうタッチケアの方が実施しやすく効果があったと述べていた。 考察 音楽の拍子と手の動きの関連性について直接的な効果はインタビューから得られなかったが、拍子の異なる曲を使用することで音楽のリズムに合った自然な動きが生まれ、さらに言葉の響きが加わることで施術者自身の癒し効果があったと考えられる。うたうタッチケアの目的は、施術者の手の動きに音楽を合わせて行うことであるため、他の選曲であっても効果があると考えられる。
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