心の内面に迫ることがスピリチュアルであるとの視点から考察を進めてみれば、古代の仏教から自己の内面性に深く迫った僧侶の存在が注目される。まずは山中に入り修行を積んだ僧侶たちである。彼らは虚空蔵法を修し、不思議な力の獲得を前提としていた。また中世には、南都の法相宗や禅宗の僧侶が注目される。貞慶や良遍には深い心の洞察が認められ、それは、弥勒教授の頌を用いた独特の瞑想の中に見て取れる。また彼らの関心であった死ぬ直前の心(命終心)の考察の中に、人間性を深く見つめた眼差しを見て取ることができる。また禅宗では道元の著作の中からは、万法から私たちに働きかけてくるという視点が見出せ、ここに心という「場」を媒介にしたスピリチュアリティを感じ取ることができるように思う。
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