ユーザーの求める品質に応えつつ,チップ工場は日々コストダウンを目指して操業に工夫を凝らしている。1945年に米国で生まれ2011年までUseful Methodsとして広く流通してきた『TAPPI-UM21 Sieve Analysis of Pulpwood Chips』や,1985年以降に北欧三国で開発された『SCAN-CM 40:01 Size Distribution』は,いずれも電動式のラボスクリーンを用いた篩分検査の手順書として,チップ工場の品質管理に用いられている。
チップサイズはチップの長さ・幅・厚みの3変数により決まるが,特に長さについてはチッパーの各構成要素の構造や役割をよく理解した上で,適切な調整や保守点検をもって管理する必要がある。チッパーには様々な形式があるが,本稿では固定型ディスクチッパー,中でもカーセージ式・サムナー式・らせん式(ノルマン式)の特徴や切削機構の構造について述べた。チッパーの各構成要素としてはスパウト(原木投入口)・滑刃・ディスクライナー・刃口ライナー・切刃・受刃・側刃・裏刃を挙げ,それらの調整方法や切刃調整治具についても解説を試みた。具体的には切刃ゲージとシックネスゲージを用いた調整手順,また操業時におけるチップ品質上の問題点と解決方法についても記載した。尤も,そうしたトラブルシューティングの内いくつかは,そもそもチッパーディスクの回転にブレやバタつきがないことが大前提となる為,ベアリングのあそび及びディスクのあおりの点検や,チッパー各構成要素それぞれの保守基準など,日常の管理が精密に出来る体制になっていないとそれに気付くことすら出来ない可能性がある。
最後に植林木ユーカリチップ生産の操業事例として,原木トラックにより輸送された剥皮済丸太を大型固定式チッパーで切削するブラジル・AMCEL社のチップ工場レイアウトと,全幹集材からモバイル式チッパーで林内チッピングしチップトラックに積み込む豪州の伐採請負業者Croxley社によるオペレーションを紹介した。
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