目的:言葉や態度によって他者を攻撃する心理的暴力・
嫌がらせ
は,看護師のメンタルヘルス不調や離職意向に関連する要因として指摘されている.近年では,情報通信技術を介したサイバーブリングという隠れたハラスメントが,看護師のメンタルヘルスを脅かす要因として注目されている.本研究では,女性看護師が受ける心理的暴力・
嫌がらせ
やサイバーブリングに,コーピング特性,社会的支援,職場のソーシャル・キャピタルを加味し,抑うつや離職意向との関連を明らかにすることを目的とした.
対象と方法:国内4病院に勤務する管理職を除く2,158名を対象として無記名自記式質問紙調査を実施し,1,151名(有効回答率53.3%)の女性看護師を分析対象とした.抑うつ並びに離職意向を従属変数,心理的暴力・
嫌がらせ
とサイバーブリング,コーピング特性,社会的支援,職場のソーシャル・キャピタルを独立変数として投入し,重回帰分析を行った.
結果:抑うつは,心理的暴力・
嫌がらせ
,サイバーブリング,コーピング特性の「回避と抑制」と正の関連,コーピング特性の「視点の転換」,社会的支援の「上司の支援」,「同僚の支援」と負の関連があった.離職意向は,心理的暴力・
嫌がらせ
,コーピング特性の「回避と抑制」と正の関連,コーピング特性の「視点の転換」,社会的支援の「上司の支援」,垂直型ソーシャル・キャピタルと負の関連があった.
考察と結論:看護師がメンタルヘルス不調に陥らず,安心して働き続けていくためには,心理的暴力・
嫌がらせ
を未然に防ぐ職場環境形成の重要性が示唆された.また,情報通信技術を介したサイバーブリングについても同様に,看護師のメンタルヘルス不調につながりうる要因として推察された.そのため,看護師一人ひとりが言葉や態度に加えて情報リテラシーに対する意識を高めることが重要と考える.
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