2023年5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられたことで、長期間に及ぶ「コロナ禍」において停滞していた学校現場での諸活動も次々と再開されていった。このように、2023年はコロナ禍以前の正常な教育活動を取り戻す契機となったという意味で希望の年だったと言えるだろう。一方、少子化の加速やこどもの貧困、児童生徒の自殺者数・不登校者数やいじめの認知件数・重大事態数が過去最多を更新したこと、教員の多忙化、教員不足、教員による性犯罪の多発、生成AIの教育現場での利用方法等、前年から蓄積されてきたものも含め、全てのこどもに教育を受ける権利を保障する上でも速やかに対策を講ずべき様々な教育課題が取り沙汰された年でもあった。
こうした問題に対して、こどもに関する政策を総合的に推進する「こども家庭庁」が内閣府の外局として設置されたことを始め、文部科学省(文科省)を中心とした、自殺・不登校・いじめ対策、生成AIの利用方法、教員の長時間労働解消等に関する制度改正の実施や通知等の発出、中央教育審議会(中教審)質の高い教師の確保特別部会による教員の働き方改革に関する緊急提言の公表、各自治体による教員確保を目的とした教員採用の早期化といった施策等、本格的な対応が次々と発表され実施に移されている。未だ不十分と思われるものも多くあるが、こうした様々な改革を2024年以降も実効性を持って継続していくこと、そして、我々教育学研究者がそれらの動向に注目して検証や提言等を積極的に行っていくことが重要である。
以下、2023年1~11月の教育改革案・調査報告等については、『内外教育』(時事通信社)の「教育界の重要日誌」と『教職研修』(教育開発研究所)の「教育備忘録」を、12月については、「教育業界ニュースReseEd(リシード)」(https://reseed.resemom.jp/)、「教育新聞」(https://www.kyobun.co.jp/)、「NHK『教育』ニュース一覧」(https://www3.nhk.or.jp/news/word/0000034.html)に掲載されたトピックを取捨選択し、それらの説明・表現を基に適宜修正・加筆して執筆した。その際、できる限り各省庁・自治体・団体のウェブサイト等で情報の確認も行った。
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