統合失調症患者は, 対人相互作用場面において, 多様な障害をもつ。中でも, 他者感情への共感や自己情動の表出に困難を示す。本研究では, 統合失調症患者, 健常者 (各12名) を対象に快・不快イメージ課題中の脳血流量変動についてNIRS装置を用いて比較検討した。まず, 快・不快に感じる生物の写真を提示し, 憶えるよう指示した。「正円」イメージ想起をコントロール課題, 憶えた「快・不快に感じる生物」イメージ想起をターゲット課題として, 5回ずつ交互に, 快・不快条件で実施した。結果, 健常群では, 快・不快条件共に, 基本イメージ課題で賦活した領域に重なった前頭側頭領域が賦活していた。群間比較では不快条件において有意に健常者群のOxy-Hbの変動が高く, 統合失調症者の前頭葉の抑制機能の低下を示唆した。以上より, NIRSは統合失調症患者の情動関連脳機能を把握する簡便かつ有用な精神生理学的指標となり得ると考えられた。
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