一学校におけるスクールカウンセリング活動を, 学校メンタルヘルスサービスの観点から実施面に焦点をあて評価を試みた。また今後のサービス展開の検討と包括的サービス評価の方法論について考察した。
対象となった学校は, 広範地域に複数校舎を有し, 1, 2万の大学受験浪人生を抱える大手予備校である。
学校職員
は, 授業を担当する “講師” と日常の連絡や相談に応じるクラス担任 (以下 “担任” と呼ぶ) とに役割が分かれている。スクールカウンセリングは1986年に1名の精神科医で試行的に開始され, 2年目にサービスの目的と実施計画が策定され実施された。本論文は, この実施計画がその後どのように行われたかを評価するものである。
実施評価 (process evaluation) では, (1) プログラムがどの程度計画通りに実施されたか (以下 “計画実施度” と呼ぶ) と (2) サービスの目的がどの程度達成されたか (以下 “目的達成度” と呼ぶ) の2点を準拠枠とした。前者 (1) で言うところのプログラムとして, 1) 各校舎へのカウンセリング室の設置, 2) 学生集団全体の心身状態の把握, 3) 教職員とカウンセラーの連携, 4) 啓蒙教育活動, 5) 緊急対応, 6) 外部医療機関との連携, の6要素を計画し実施した。(2) の目的としては, (情緒問題の解決, (4) 学生全体へのサービス展開, (5) 予備校生の主問題である集中困難への対応, (6) 精神科治療を要する学生への対応, の6主題を挙げた。
実施プログラムの計画実施度評価は内部評価ゆえ客観性の保持が重要となるが, 各年度の活動・業績記録を基に分析したところ, ある程度実施されていると評価できた。一方目的達成度評価では, (1)(6) は高い達成度が得られたと判断できるが (4) は不充分であった。すなわち
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に把握されやすい情緒問題を抱える個々の学生への対応とは対照的に, 学生集団全体へのサービス展開にはよりいっそうの工夫が求められた。これらもふまえ包括的なプログラム評価の方法論を検討した。
今後のサービスの重要課題として,
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との連携, および啓蒙教育活動の充実を指摘できる。しかしながら少子化と不況の社会的状況下, 特に独立採算性の学校においては効率評価に基づく実施プログラムの優先順位の検討が必要となろう。もちろん本研究の対象の特殊性もあるが, これら評価の方法論や考察は学校メンタルヘルス活動に底通すると考えられる。
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