飛しょう体を用いた宇宙観測は気球に始まり観測ロケット, 人工衛星から無人惑星探査へとその範囲を拡げてきた. その発展には単なる知識欲以上に我ら人類の活動範囲の拡大志向という潜在的駆動力を実感させるものがある. 科学観測という観点からすれば
宇宙探査機
は一つの実験物理機器である. 多くの物理実験装置がそうであるように,
宇宙探査機
の設計に必要な法則あるいは動作を支配する法則は古典物理学のそれであり, 惑星探査機の軌道が2000年も昔に考察された円錐曲線であることに象徴されるように, その工学的側面を理解するために高度な数学が必須という訳でもない. ただ, 長い間にわたり着実に向上してきた広範な工学的技術の水準に支えられ, そのような探査機が理屈通りに作られるようになったという背景を噛みしめながらこの小解説を読んでいただきたく思うものである.
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