アメリカの図書館でマンガが所蔵されるようになったのは近年のことである。長い間マンガ,特に「コミック・ブック」と呼ばれるマンガの刊行物は,「子供向けの低俗な読み物」として時には規制運動も巻き起こるほど批判され,図書館はむしろ「コミック・ブック」に対して批判する側であった。その図書館が21世紀に入り,マンガを積極的に支持し,所蔵対象にするようになっている。本稿では,マンガが図書館に所蔵されるようになった歴史的経緯を概観し,この変化の起こった要因の一部に,マンガが「グラフィック・ノベル」として再発見された点や日本マンガ人気があった点を考察することにより,アメリカ社会におけるマンガの文化ヒエラルキーの変遷を検証する。
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