本研究は,学校不適応の予防のために,特定の市全体で導入した「小中連携支援シートシステム」の実践の効果を検証することを目的とした。これは,わが国初の試みであり,小学校の期間に年間15日以上を欠席した小学6年生について記載されたシートと,その子どもへの支援について,教師向けに臨床心理の専門家が記載したコメントを活用するもので,6つの中学校と18の小学校とを結ぶ連携システムである。その結果,以下のことが明らかになった。(1)このシステムの導入前3年間と,導入後を比較した結果,市全体で,中学1年生の長期欠席の出現頻度に有意差が見られ,システムの効果が示唆された。(2)その中の2つの中学校を対象とし,導入効果の検討を行ったところ,導入後に年間欠席日数の増加抑制傾向が認められ,(3)とくに,小学6年生で欠席日数が6日以上の子どもの欠席日数に増加抑制の傾向が見られることが明らかになった。「小中連携支援シートシステム」の学校不適応の未然防止の有効性と,研究方法上の課題が考察された。
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