この論文の目的は社会事業家・生江孝之(1867-1957)の保育事業論について,とりわけ家庭改良および隣保改善に焦点をあてて分析と考察を行うことである。研究方法として,生江の内務省在任期間に限定した文献調査を行った。その結果,保育所の副業としての家庭改良および隣保改善に関するいくつかの考え方が明らかになった。そこで,筆者は保育所保母による家庭改良と隣保改善のさまざまな内実について考察した。結論として,感化救済事業を背景とした保育事業において,家庭改良および隣保改善は母親の監督や貯金の奨励,職業紹介等を通じた「良民」育成プロジェクトであった。
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