本研究では,「指導目標を設定するに至る判断の根拠」を示す段階に特化した指導プログラムを(岡本,2020を一部修正)を学部学生に適用し,その効果を検討することを目的とした.対象は,教員免許取得を目指す4年学部学生7名であった.指導プログラム(120分)は,指導課題の優先順位選定のための判断基準の説明,機能的アセスメントに基づく行動問題の生起要因の説明・演習で構成された.また指導プログラム前後に,それぞれ演習1,演習2およびアンケートを実施した. 演習1および演習2で扱った事例は,文部科学省から引用した同一内容であった.指導プログラムを実施した結果,演習2において指導目標の設定理由として挙げられた「生起要因」について, 演習1に比べて「先行条件」および「結果条件」の記述が増加した.一方,「優先順位」について,指導プログラム後はその前に比べて,指導プログラムで提案した優先順位の根拠となる観点のカテゴリ数が増加するとともに,「優先順位」の根拠となる視点を記述する対象者数が増加した.結果 から,指導プログラムはほとんどの対象者に効果をもたらしたことが示された.「生起要因」「優先順位」に関する記述が増加した要因,および今後の課題を指摘した.
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