症例は93歳の女性で,下腹部痛が出現し,精査加療目的で当院を受診した.腹部X線,腹部CTでは著明な小腸ガス像,肝臓周囲の腹水,腸管の拡張,腸管壁の肥厚を認め,さらに上腹部のfreeairを認めた.検査結果より上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した.開腹所見では多量の膿性腹水を認めた.腸管は癒着し, Treitz靱帯から約60cmの空腸に穿孔部を認めた.近傍の腸管内に異物を触知した.空腸は穿孔部を切除し端々吻合で再建した.摘出標本内にpress-through-package (PTP) 包装を認め,穿孔部の粘膜面に線状潰瘍も認めたため,この薬剤包装誤飲による空腸穿孔性腹膜炎と診断した.術後経過は良好で術後18日目に退院した. PTP包装誤飲による消化管穿孔の中で小腸穿孔は比較的稀で,本邦報告例は29例である.今後は薬剤包装の改良や1回量を分包化するなどの予防策が重要と考えられた.
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