目的:義歯装着者の咀嚼機能を定量化することは,義歯補綴の術前の検査および術後の経過を評価する際に重要である.当講座では診療において咀嚼能力を測定する際に,直接的検査法の一つである摂取可能な食品から義歯装着者の咀嚼機能を総合的に評価する佐藤らの咀嚼機能評価表(咀嚼スコア20)を用いた調査を行ってきた.しかし,この方法は食品の項目が多く,記入に時間を要するため,更なる改良が必要であると考えた.
本研究は食品を10種類に厳選した改良型咀嚼能率判定表(咀嚼スコア10)を開発し,その有効性を検討することを目的とした.
方法:被験者は上下全部床義歯装着者34名とした.咀嚼スコア20に「食べたことがない」,「嫌いである」の2項目を追加した.咀嚼指数で分類した5グループの中から,2種類の食品を選択した.嫌いな人が多い食品を除外し,咀嚼スコア10を試作した.さらに,咀嚼スコア20と咀嚼能率(グルコセンサー®),咀嚼スコア10との相関関係を検討した.
結果:咀嚼スコア10と咀嚼スコア20との間に強い正の相関が認められた(r=0.97,p<0.01).また,咀嚼スコア10は咀嚼能率(r=0.57,p<0.01)との間にも咀嚼スコア20(r=0.62,p<0.01)と同程度の有意な相関を認めた.
結論:以上より,今回作成した咀嚼スコア10は臨床における患者の咀嚼能率を以前よりも簡便に行うことができる可能性が示唆された.
抄録全体を表示