2022 年 35 巻 2 号 p. 105-110
本研究では高齢メインテナンス患者を対象とし,Eichnerの欠損様式分類および欠損修復の種類別による咀嚼能力および口腔への主観的満足度に関して比較検討することを目的とした.
2019年1~4月に歯科診療所をメインテナンス受診した,満65歳以上の患者136名(平均年齢73.5±5.5歳)を対象者とした.対象者をEichnerの欠損様式分類と欠損修復の種類で群別し,咀嚼能力検査および主観的満足度評価のアンケート調査などを実施した.
Eichnerの各欠損様式分類でのグルコース溶出量の平均値は,咬合支持域の多いA群で最も高く,咬合支持域が減少すると,咀嚼能力は低下した.欠損修復の種類別でのグルコース溶出量の平均値は,天然歯および歯冠修復群で187.9±54.0 mg/dL,義歯治療群で135.9±47.5 mg/dL,インプラント治療群で182.1±51.3 mg/dLであった.義歯治療群の咀嚼能力は,他の2群と比較して有意に低値を示した.口腔への主観的満足度評価は咀嚼能力が高値を示した群で有意に高い結果であった.
高齢メインテナンス患者の咀嚼能力は,インプラント治療群が義歯治療群よりも高く,天然歯および歯冠修復群と同等であることが示された.併せてインプラント治療では主観的満足度評価も他の欠損修復よりも高く,高齢患者の口腔へのリテラシーを向上させる可能性が示唆された.