住民は都市河川の利用者であるとともに,維持・管理の役割を持つと考えられる。特に中国では急激な汚濁が進行しており,住民,NGO,行政の共同での取り組みが急務だと思われる。中国にとって,日本での公害克服の経験は同じアジアの国として有効であると考えられる。本稿では都市河川の保全に対する住民,NGO,行政の意識を知るため,1)中国行政の現状についてのヒアリング調査,及び2)日中の2河川(鴨川と府南河)における住民意識とNGO活動についてのアンケート調査・ヒアリング調査を行った。比較の主な目的は,中国での住民参加の現状を知り,今後のあり方について考察することである。比較の対象とした鴨川(京都市)と府南河(成都市)は,歴史や諸元が似通っており,日本と中国を比較するのに適切であると考えた。中国のNGOに関する情報は通常ほとんどないと思われるが,我々は府南河のNGOの形態,問題点などの情報を入手することができた。中国のNGOは行政の影響を強く受けており,また資金の不足により,十分な活動ができていなかった。また,鴨川NGOと比較すると住民の意識や行動が成熟していない状況であった。住民意識調査においては,両河川とも住民に親しまれていながらも,その形態の違いが現れた。中国では水流に接することは少なく河川端を通り道として捉えている傾向が強く,河川でなくとも良好な環境であればそれで置き換えうることがわかった。釣りなどを通じて河川と接している鴨川と大きく異なっていた。行政に対するヒアリングでは,中国では依然として,中央政府が強い権限を持っていることが明らかとなった。政府内で中央から地方へと環境意識を高めていく必要性があきらかであった。今後の住民参加のためにはまずNGOと行政が協力して行動を行うための基盤整備を行う必要があることが示された。 住民は都市河川の利用者であるとともに,維持・管理の役割を持つと考えられる。特に中国では急激な汚濁が進行しており,住民,NGO,行政の共同での取り組みが急務だと思われる。中国にとって,日本での公害克服の経験は同じアジアの国として有効であると考えられる。本稿では都市河川の保全に対する住民,NGO,行政の意識を知るため,1)中国行政の現状についてのヒアリング調査,及び2)日中の2河川(鴨川と府南河)における住民意識とNGO活動についてのアンケート調査・ヒアリング調査を行った。比較の主な目的は,中国での住民参加の現状を知り,今後のあり方について考察することである。比較の対象とした鴨川(京都市)と府南河(成都市)は,歴史や諸元が似通っており,日本と中国を比較するのに適切であると考えた。中国のNGOに関する情報は通常ほとんどないと思われるが,我々は府南河のNGOの形態,問題点などの情報を入手することができた。中国のNGOは行政の影響を強く受けており,また資金の不足により,十分な活動ができていなかった。また,鴨川NGOと比較すると住民の意識や行動が成熟していない状況であった。住民意識調査においては,両河川とも住民に親しまれていながらも,その形態の違いが現れた。中国では水流に接することは少なく河川端を通り道として捉えている傾向が強く,河川でなくとも良好な環境であればそれで置き換えうることがわかった。釣りなどを通じて河川と接している鴨川と大きく異なっていた。行政に対するヒアリングでは,中国では依然として,中央政府が強い権限を持っていることが明らかとなった。政府内で中央から地方へと環境意識を高めていく必要性があきらかであった。今後の住民参加のためにはまずNGOと行政が協力して行動を行うための基盤整備を行う必要があることが示された。
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